よくある子どもの病気

よくある子どもの病気

今回は、よくある子どもの病気のうち、「そけいヘルニア」と「臍(さい)ヘルニア」について簡単に説明させていただきます。

そけいヘルニア

俗に、「脱腸」といわれる病気で、正式な病名は「そけいヘルニア」といいます。小児外科疾患の中では最も多く、その発生頻度は50人から100人に1人といわれています。
赤ちゃんのおなかが形成される際、おなかの底の部分には、腹膜鞘状突起といわれる刀の鞘のような落とし穴が作られます。ほとんどの子どもは、この落とし穴は自然にふさがってしまいますが、開いたままになっていると、おなかの圧が上がったときに、腸や、女の子では卵巣が落ち込んで、足の付け根(そけい部)や男の子の陰嚢が膨らんだ状態となります。おなかの圧が上がったとき(おなかに力がはいったとき)、例えば、泣いたり、笑ったり、うんちをするときなどに、足の付け根や陰嚢がふくらんで、おとなしくしていると、自然に引っ込んでしまうのが特徴です。これは、おなかの圧によって、腸や卵巣が、落とし穴に入ったり、出たりしているためです。
落とし穴に出入りしているうちは、軽い違和感だけで、痛みもあまりありませんが、いったん腸や卵巣がはまりこんでしまって、抜けなくなってしまうことがあります。これを「そけいヘルニア嵌頓(かんとん)(写真①)」といいます。こうなると、痛みや嘔吐が出現し、この状態が長く続くと、はまりこんだ腸や卵巣が壊死してしまうことがあります。
したがって、「そけいヘルニア」は発見されたら、早めの手術が必要です。手術は落とし穴の根元の部分を糸で結んでしまうもので、女の子で5~10分、男の子で10~15分程度で終わります。

臍(さい)ヘルニア

俗にいう「でべそ」のことで、正式な病名は「臍ヘルニア」といい、赤ちゃんの5~10人に1人の割合でみられます。
へその緒がとれた直後には、へその直下には丸く開いた穴があります。これは筋膜で閉鎖されますが、これが、開いたままになっていると、泣いたり、いきんだりしておなかに圧力が加わった時に、この穴から腸が飛び出して「でべそ」になります。生後数日~数週で出現し、3~6か月頃が突出のピークでその後は徐々に小さくなります。腹筋の発達とともに突出の勢いが弱まり、多くは1歳頃までに80%、2歳頃までに約90%が自然治癒します。2歳を超えても穴が残って突出している場合(写真②)や、穴が閉鎖しても、おへその皮膚があまって変形が強い場合(写真③)は手術の対象となります。
手術はへその輪郭で半周ほどの切開を加え腸の飛び出してくる穴を筋膜でふさいでしまいます。その後、成長後にかっこいいおへそになるように下向きのひっこんだおへそを作ります。
わからないことや不安なことがあれば、お気軽に平戸市民病院小児科におたずねください。
(平戸市民病院 外科・小児外科 浜田 貴幸)