海や山の事故に注意しましょう

海や山の事故に注意しましょう

これからの季節は海ではクラゲや魚に刺される事故、山は家の周りでは虫に刺される事故が多くなります。刺されたりかまれたりしたときにまずどうすればいいかまとめてみました。

刺されたら痛い魚

ヒレや胸ビレなどに毒腺のあるとげをもっている魚(ゴンズイ、オコゼ、アイゴ(ヤノバル、バリ)、エイなど)で、刺されると半日~1日くらい激しく痛みます。腫れて吐き気や関節痛を伴ったり、高熱が出たりする場合もあります。
特に夜釣りなどでは、釣れた魚をよく確かめてから持つようにしましょう。

○応急処置
毒は蛋白毒なので熱を与えると無毒化することができます。我慢できるギリギリの熱さのお湯に刺されたところを浸しておくと痛みが引いてくるはずです。刺された側は敏感になっているのでついつい低い温度にしがちですので、もう一方の手や足を同時につけるといいかもしれません。医療機関に来ても解毒剤はありませんし、来院しても同じことをするだけなので、その時間があれば自分で手当するほうがいいでしょう。

毒クラゲ
クラゲの毒はタンパク質からなる溶血成分、タンパク質分解成分などなど多様な成分からできており詳しくは解明されていません。また、クラゲの種類によってもピリピリする程度のものから激痛を伴い、生命に関わるものまで様々です。
全てのクラゲが強烈な毒を持っているわけではありませんが、特に注意が必要なクラゲはカツオノエボシ、ハブクラゲ、アンドンクラゲ、カギノテクラゲなどです。
これらの危険なクラゲに刺されると、その部分に灼熱間のある激痛が走り、やがて赤紫色に腫れ、触れた所がミミズ腫れになる。場合によっては水ぶくれになります。さらに重症の場合は、致命的になることがあります。また、繰り返し刺されると急激なアレルギー反応により、血圧が低下して意識がなくなったりする(アナフィラキシーショック)を起こす場合があります。

○応急処置
刺された場合、焦ってその部分をこすらないように。こすると残った刺胞が刺激され更に被害を大きくします。
①まずは、海水でこすらないようにしてきれいに洗い流す。(水をかけると刺胞を刺激して更にひどくなります)
②残った刺胞をていねいにピンセットなどで取り除く。(素手では触らないこと!)
③患部を冷やし病院へ行ってください。
・ハブクラゲやアンドンクラゲに刺された場合は、患部に食酢をかけると刺胞の毒が分解されるので、沖縄の海水浴場には緊急手当用の食酢が用意されています。
・カツオノエボシに刺された時は、アルコールかアンモニア水をかけて応急処置をします。
・種類がわからない場合は、食酢やアルコールをかけないように!更にひどくする場合があります。

昆虫

ムカデ ムカデの仲間(ムカデ、ゲジなど)は頭の次の節に毒腺を持ち、この毒を用いて昆虫などの動物を捕食します。かまれるとかなり痛むが人命にかかわる被害はほとんどありません。 予防と応急処置
屋内に侵入されないようにするには、家やその周辺にムカデが生息する環境をつくらないというのが基本です。
ムカデは「せまい」「暗い」「湿り気がある」といった条件のところに暮らしますから、庭や立木、軒下の風通しをよくします。室内も整理整頓し通気をよくしましょう。風呂場を使用しないときには、おけ、シャンプー、腰かけイス、浴槽のふたなどをできるだけ浴室の外に出しておくといいです。
また、くつをはく前にはくつの中に入っていないか確かめてはきましょう。
かまれたら痛みと腫れは強いので早いうちは冷やしながら医療機関を受診したほうがいいでしょう。特異的な解毒剤はありませんが、局所麻酔剤が痛みには有効です。
ハチ 社会性昆虫であるアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチは集団で敵に当たります。ハチが他の生物に対して毒針を刺すと、ハチが攻撃的になるフェロモンが放出され仲間に敵の来襲を知らせるのです。 予防と応急処置
ハチは外敵から巣や身を守るために攻撃します。巣やハチを刺激しなければむやみに刺しません。ハチが近寄ってきてもあわてて手で払ったり、駆け出したりせず、静かにその場を離れるようにしてください。屋内や車の中に入ってきたときは、窓を開けて外へ出ていくのを待ちましょう。
山や森林に入るときは長袖長ズボン帽子を着用しましょう。黒い色はハチを刺激することがありますので、白や明るい色の服を着るようにしてください。ハチは甘いものが大好きです。ジュースの空き缶などは必ず持ち帰るようにし、香水などをつけていくのはやめましょう。
2度、3度と繰り返し刺されるとアナフィラキシーショックを起こしやすくなるので、前回症状が軽かったからと油断しないように。早めに医療機関を受診してください。ムカデと同様に特異的な解毒剤はありませんが、2時間ほど様子をみて異常(発疹、呼吸困難、血圧低下など)がないことを確かめることが必要です。
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある人には「エピペン」という自己注射できる注射セットを持ち歩くことをおすすめします。これには健康保険が適用されます。
ダニ 以前からツツガムシ病、日本紅斑熱などが知られていますがこれらはマダニに噛まれたときにダニが持っているリケッチアが人間の体内に入って発疹、高熱などをきたすものです。最近はウイルスによる重症熱性血小板減少症候群が話題になっています。 予防と応急処置
山や森林に入るときは長袖長ズボン帽子を着用し、すそは入れ込んでダニの侵入を防ぎます。ダニは身体に取り付いてもすぐは刺さず身体の柔らかいところを探して刺すので、野外活動後は入浴して全部着替えるようにします。脱いだ衣服は直ちに洗濯するかナイロン袋などに入れて口を縛っておきます。
もし身体を刺して吸血して大きく膨らんでいるダニを発見したら、ダニの体部をつまんで引っ張ると口器がちぎれて皮内に残ってしまうことがあるため、身体を潰さないように口器の部分からつまみあげるようにする必要があります。医療機関では皮膚ごと切開して取り除く場合があります。

最後に
もし刺されたりかまれたりして心配なこと、気になることがあればご相談ください。

(平戸市民病院医療監 賀来 俊)