突然死について

突然死について

若い人の「突然死」について

ブルガーダ症候群は俗に「ぽっくり病」ともいわれ主に働き盛りの男性が夜間就寝中にうめき声をあげ突然死するアジア人に多い病気です。ぽっくり病が特発性心室細動という不整脈が原因であることをスペインのブルガーダ兄弟が初めて報告しました。心臓の種々の遺伝子異常が不整脈を引き起こし馬鞍型・コーブド型の心電図異常を示します。一方で心電図異常があっても普段の心機能には全く問題がないため検診でたまたま発見されることが多いようです。心室細動が起こりやすい心臓体質を持つため副交感神経優位となる就寝中に致死性心室細動が生じ、突然死するため「ぽっくり病」と呼ばれてきました。心室細動は除細動器付心臓ペースメーカーで予防する場合もあります。
若年で突然死した身内がおられる方、悪夢でうなされた経験がある方は循環器科での精査をお勧めします。

 

心筋梗塞「突然死」について

心筋梗塞は心臓に栄養を送る冠動脈が血栓で突然詰まり血液が流れなくなり心筋が壊死し心不全を来す怖い病気です。心筋梗塞は左右3本ある冠動脈のどの部位が詰まるかで症状や重症度が異なります。左冠動脈の閉塞は左室前壁中隔の梗塞で広範囲の病変であることが多く重症心不全や左心室破裂などで突然死の原因となります。右冠動脈の閉塞は一過性の房室ブロックを生じ意識消失や全身の脱力を来します。一方、冠動脈末梢部位での閉塞は症状が軽く、後から心筋梗塞と判明する場合もあります。急性期の治療は冠動脈に詰まった血栓を吸引し血管を拡げるステント療法、病変が広範囲であれば冠動脈バイパス手術を選択します。また、重症な虚血性心不全に対してはCRT(両心室同期ペ
ースメーカー治療)が有効な場合もあります。
いずれにせよ心筋梗塞を疑えば早急に病院を受診してください。

 

大血管の「突然死」について

胸腹大動脈瘤の破裂、急性大動脈解離、心タンポナーデが突然死ではかなり多い疾患です。大動脈疾患は動脈硬化が主な原因ですがマルファン症候群という結合組織が弱くなる遺伝病もあります。破裂や解離は突然の激しい胸痛、腹痛、背部痛などで始まりますが、上行大動脈解離で発症する心タンポナーデでは心嚢内に血液が急速に貯まり心臓が圧迫されるため、いきなりショック症状となり心臓外科で緊急心嚢水除去手術をしなければ救命できません。大動脈瘤が胸腔内や腹腔内で突然破裂した場合は大量の出血によるショックから救命は極めて困難です。
自宅などで「突然死」され、死因究明が必要な場合、CT検査で死体検案をすることがあります。
画像検案(AI)は従来心臓死と推定・検案されていた突然死・不明死の多くが大動脈瘤破裂、心タンポナーデ、脳内出血であったことを明らかにしています。

 

平戸市民病院副院長 内科 飯野 俊之