平戸島にしかない「言い伝え」のようで、何の根拠もない迷信です。
蝮の毒は、血液を溶かす毒と筋肉を壊す毒です。咬まれた近くの腕や足が急速に腫れ、時としてその腫れは胸など身体の中央にまで及ぶことがあります。その毒 で壊された筋肉から出てくるミオグロビンが腎臓障害を起こし、場合によっては死を招くこともあります。急速に腫れることで脱水状態となり、ミオグロビンに よる腎障害が重なって生命に危険な状態となるのです。脱水を治療するため、水分が主成分である点滴静脈注射で水分を補給し、腎障害を予防すれば殆ど治りま す。
昭和60年平戸市国保紐差病院に赴任した年の夏、ある方が蝮に咬まれ病院に駆け込んできました。入院治療して治ったので入浴を勧めたところ頑として「入ら ない」といわれるのです。夏の暑い盛りでしたので風呂にでも入ってさっぱりされたいだろうと思っていたのに・・・・よく聞いて
みると「75日は水にあたるな、小豆を食べるな」との言い伝えを守っておられたそうです。点滴用
の注射薬は殆どが水です!「風呂に入って、あるいは水を飲んで、あるいは小豆を食べて死ぬことがあったら私の命も絶ちます!」と、大見得を切って風呂に入ってもらい、水を飲
んでもらい、死なないことを証明して退院していただきました。