単身赴任診療録-結核

単身赴任診療録-結核

■はじめに
結核は戦前、戦後の日本で「不治の病」と言われて恐れられてきました。今やその患者数は減少し、過去の病気と思われがちです。
結核患者数を世界的にみれば、インド、中国、南アフリカ、ナイジェリア、インドネシアなどの発展途上国や人口の急増した国で非常に多く「高蔓延国」とされ、それに対して日本は「中蔓延国」とされています。
平成22年の日本の肺結核患者数は5万5千人で、そのうち新登録患者数は2万3千人です。これを罹患率でみると、同年の日本で18.2人となりますが、都 道府県別に罹患率の多い順に挙げると、1位が大阪府(29.2人)、2位は長崎県(23.3人)、3位東京都(23.1人)・・・45位 山形県 (11.2人)、46位 群馬県(11.0人)、47位 長野県(9.1人)でした。これを都市別で見れば1位が大阪市(47.4人)で、2位の名古屋市 (31.5人)を大きく引き離し、地域により大きな格差があることがわかります。平戸市は、平成23年度の罹患率が17.5人であり、この数値は決して少 ないとは言えません。
結核患者数は死亡数も年々減少しています。最近の傾向は患者の多くが高齢者であり、平成
22年の新登録結核患者数では60歳以上が全体の66.8%を占めます。その人口構成を年代別にみると60歳代が19.9%を、70歳代で38.8%、80歳代では82.6%、90歳以上になると91.8%を占めます。
結核菌のほとんどが鼻や口から肺へ、一部は胃腸から侵入し、全身に症状を引き起こします。過去に体内に侵入した結核菌が何年も経って免疫力低下で再発することが高齢者結核の多い理由です。
結核菌は、細菌より小さいため結核菌が空気感染(飛沫感染)しやすく、正しくマスクをして予防
、隔離が必要になります。また結核菌は発育に長時間を要するため、症状が現れるまでに時間がかかり、診断、治療に遅れが生じる原因となります。

■症状
発熱、体重減少、寝汗、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状と、咳、痰、血痰、胸痛、息苦しさなどの呼吸器症状がみられることもありますが初期に症状のないことも多くあります。

■診断
胸のレントゲン撮影と痰の検査を行います。痰の出ない人には気管支鏡で痰を洗い出すこともあります。その他、胃液の結核菌を調べることもあります。まずは咳が2~3週間も続けばレントゲンと痰の検査だけでも受けてください。

■治療
痰に菌が見つかれば、病院で隔離して薬物療法を6か月以上行います。ただし菌が出なくなれば隔離を止めて通院とします。

■予防
病院の届け出を受けた保健所は、結核菌の拡がりを防ぐために本人や家族、職場等を調査をします。病院は、保健所と協力して結核撲滅のために最善の努力を行います。
正しい知識を持って結核を予防すれば怖くなく、早く治せば命を落とすこともないことを知ってくだ
さい。そのために、60歳以上で毎年、検診を受けること、2~3週間の長引く咳があれば病院で検査を受けることをお薦めします。

(呼吸器外科 中村 宏)