平成19年12月にMRI装置が導入されました。様々な病気に対する診断にMRI装置は非常に有能な装置の一つです。そのひとつの例として今回は脳梗塞についてお話します。
これまで救急などで脳梗塞疑いの人が病院に来た場合は、まずCT装置で頭の画像を撮影し、脳梗塞の診断をするには非常に分りづらいその画像を、ドクターは一生懸命に見て診断するのが常でした。(もちろん画像だけではなく、患者さんの状態や、血液検査などを総合して診断します。)しかし、MRI装置が導入されたことにより脳梗塞に関する診断が一変しました。拡散強調画像という画像を撮ることで脳内の梗塞部分を非常に分りやすく観察できるようになったのです。
▲図1 脳梗塞CT画像 | ▲図2 脳梗塞MRI画像 |
図1と図2はどちらの画像もほぼ同じ断面を見ています。
CTの画像では脳梗塞の部分は分かりづらいですがMRIの画像で白く光っているところが梗塞の部分になります。違いが明確で非常に分かりやすいと思います。また、CTでも脳梗塞発症後24時間程度経過すれば画像上で分かりやすくなることはありますが、MRIは発症数時間後に確認できるという点においても非常に優れていると言えます。さらに梗塞部分を光るように描出する画像特性により、非常に小さな梗塞部分でさえ描出できるのです。
左図はラクナ梗塞のMRI画像です。ラクナ梗塞とは、頭蓋内外の比較的細い血管領域(穿通枝動脈)に生じる1.5センチメートル以下の小さな脳梗塞です。白く見えるところがラクナ梗塞の部分で非常に分かりやすく描出されています。
MRIは磁気と電磁波を利用する装置ですので、金属(磁性体:磁石につくもの)に弱く、それが画像に大きく影響します。このため、検査時には身に着けているもので外せるものは必ず外すようにしていただきます。また検査を受けること自体できない場合もありますのでご注意ください。
・心臓ペースメーカーを体内に埋め 込まれている人
・妊娠の可能性のある人
・閉所恐怖症の人
・入れ墨のある人など
上記以外にも化粧品、カラーコンタクトレンズなどにも金属が含まれている場合があり、人体や画像に影響するおそれがある場合には検査前に外してもらうことがあります。
今回は脳梗塞についての話でしたが、様々な病気の診断に対して非常に有用であるMRI装置の持つ能力のごく一部にすぎません。多種多様な能力を持つこのMRIを駆使し、日常の診療に役立てることができるように私たち放射線技師は日々努力しています。
(放射線班長 岩永 繁範)