最近新聞やテレビなどでちょくちょく耳にする言葉「高次脳機能障害」、これは脳卒中や脳外傷などにより記憶や感覚を総合的に使って問題を解決したり、意志決定をしたりするうえで非常に大事な脳の組織が損傷されて現れる症状のことです。また、一見普通で外から見ても分からないので別名「見えない障害」とも言われたりします。以前に比べれば高次脳機能障害に対する世の中の認知度は上がってきたとはいえ、まだまだ十分に知られていないのが実情です。
そこで今回この高次脳機能障害について大まかな概要について触れてみたいと思います。
そもそも高次脳機能とは?
イラストのように人間は目(視覚)、耳(聴覚)、口(味覚)、触る(触角)から刺激を受け、脳にその情報を送っています。そして、脳は送られた色々な刺激を知覚し、言葉に置き換えたり、学習します。
またさらに、脳は記憶した知識や経験から、判断したりもします。
このような脳の精神機能のことを高次脳機能といいます。
つまり「人が人らしく生きるための機能」です。
高次脳機能障害を引き起こす原因について
その原因は大きく分けて3つあります。
①血管が切れたり、つまったりすること・・・・
脳卒中 [脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞]
②傷つけられたり、圧迫されたりすること・・・
外傷性脳損傷(交通事故など) [びまん性軸索損傷、脳挫傷]
③炎症を起こしたり、酸素不足になること・・・
脳炎・脳症 [ヘルペス脳炎、ウイルス脳炎、低酸素脳症]
高次脳機能障害のおもな症状と日常でみられる例
①記憶障害
昔のことはよく覚えているのに新しいことは覚えられない。
少し前、あるいは直前のことを覚えていない。(何か行動をしている時に目的を忘れる、支障が出る)
②注意障害
すぐ飽きて集中力が続かない。簡単なミスが多い。
人の話を聞いていなかったり、周囲の人に気付かないことがある。
③遂行機能障害
作業を計画的にこなせない。間違いを修正したり、計画を変更できない。
物事の優先順位がつけられない。
④行動と感情の障害
感情のコントロールが難しい。怒りっぽい。泣きやすい。暴言や暴力。
その他の障害に道に迷ったり(地誌的障害)、見ているものや聞いているものが分からない(失認症)、道具の使い方が分からない(失行症)など多く存在します。
長崎県内でも推定年間発症者数(65歳以下)は約120人とされています。高次脳機能障害についてご相談の方は当院へご連絡頂くか長崎県高次脳障害支援センターまたは最寄りの保健所へご相談ください。
参考文献):中島恵子「脳の障害と向き合おう」(ゴマブックス2001)
(作業療法士 中ノ瀬 将造)